1970年代後半に、無散瞳眼底カメラが開発されました。眼底カメラの普及により広く循環器検診の一環として眼底検査が施行されるようになりました。
人間ドック、特定健康診査を受けたことのある方は、パシャっと一瞬まぶしいカメラ撮影をした覚えがあると思います。
無散瞳カメラでは、瞳孔を通して眼の後ろの方の眼底を写真撮影することができます。(眼の前の方の網膜、周辺の網膜は写りません。)撮影は簡単で一瞬で終わります。
撮影している眼底は、視神経乳頭、乳頭周辺の黄斑部を含む網膜、網膜中心動・静脈の諸枝になります。
視神経乳頭は眼球への視神経が眼球に入るところにあたり,内腔からみると,直径 1.5mmのやや白っぽい円板状になっていて、視神経の線維および網膜中心動・静脈の諸枝が網膜上周辺に向って広がっています。
日本での高血圧の有病率は高く、30歳以上の男性では約60%、女性では約45%が高血圧を報告されています。高血圧の有病率は年齢とともに高まることから、高齢化が進行している日本では高血圧の患者の数は今後も増加することが予想されています。
高血圧に伴って全心血管系の影響が及び、様様な臓器障害が認められるようになります。
眼科の眼底カメラの映像がどうして循環器検診の一環として行われるのでしょうか。
血圧が高くなると、心臓の左室肥大、慢性腎臓病、動脈硬化、無症候性脳梗塞が起こるようになり、眼底でも臓器障害、網膜疾患を認めるようになります。つまり、高血圧は脳卒中、心筋梗塞、慢性腎臓病、眼底出血などの危険因子であり、放置するとリスクが高くなるのです。
日本では食塩摂取量低下、食生活の変化、改善、高血圧の治療の進歩とともに血圧水準は低下し、重症の高血圧患者の数は減少しつつありますが、眼底の網膜血管所見を見ることは、高血圧の治療を開始するべきかどうかの判断や、高血圧による臓器障害を予防する上でも大変意味があります。
眼底の血管は人体で唯一肉眼による観察が可能だからです。血管の状態を肉眼でみて網膜血管変化を評価することができます。
2018年の特定健康診査では高血圧が疑われる該当者において医師の必要を認める場合には眼底検査を行うことができるようになりました。
眼底所見は全身所見と関連付けたKeith-Wagener分類という程度分類と、動脈硬化性変化(S)と高血圧性変化(H)を区別したScheie分類で評価します。
高血圧に伴う眼底所見分類の比較
| 眼底所見 | Keith-Wagener分類 | Scheie分類 | 全身疾患との関連 | |
|---|---|---|---|---|
| 所見なし | 0郡 | H0 | S0 | なし |
| 網膜細動脈のびまん性狭細網 膜細動脈の局所狭細化 動静脈交叉現象 反射亢進・混濁(銅線動脈) | Ⅰ群 | H0 | S1 | 脳卒中 非症候群性脳梗塞 冠動脈疾患 循環器死亡の危険上昇(オッズ1~2程度) |
| H1 | S0-1 | |||
| H2 | S1 | |||
| Ⅱa郡 | H0 | S2 | ||
| H1 | S1-2 | |||
| H2 | S2-4 | |||
| 網膜出血(斑状、点状、火炎上) 毛細血管瘤、硬性白斑,綿花様白斑などの網膜症所見 | Ⅱb郡 | H3 | S2-4 | 脳卒中 非症候群性脳梗塞 認知機能低下 循環器死亡の危険高い(オッズ比2以上) |
| Ⅲ群 | ||||
| 網膜所見に加えて乳頭浮腫 | Ⅳ群 | H4 | S3-4 | 循環器死亡の危険高い |
網膜の高血圧、動脈硬化の影響と考えられる変化があると、脳卒中を含む循環器病のリスクが最大2倍程度まで高く治すことが報告されています。
眼底検査や人間ドックにおける眼底検査では、眼底の高血圧に伴う眼底所見、網膜所見がわかるのはもちろんのこと、高血圧の臓器障害として網膜所見には意義があるのです。
健診を受けるだけでなく、結果をしっかり理解して役立ててください。
網膜に高血圧によると思われるような出血が認められた場合は眼の治療、定期検査だけでは再発、ほかの臓器の障害を起こすリスクもあります。
高血圧以外の脂質異常、糖尿病等の循環器病危険因子もしっかり予防、管理することが重要です。